彫刻 下絵

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2009/6/11 木曜日 西嶋工務店より / カテゴリ : 堂宮大工のつれづれ草

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私達宮大工は、彫刻も全て親方が下絵を描き弟子が彫っていきます。
 彫刻の下絵を描く前にはそのご寺院様の宗派、時代考査は元より未来永劫意味あるものに仕上げなくてはなりません。
先代親方は、一枚の下絵を描く為に数十カ所のお堂を見て回り、夜な夜な静まりかえった部屋で香を焚き書き上げおられました。
 私も常々描く為の心根を聞かせていただき、ある時は何回も描き直しの痛棒をいただきました。
流派の秘伝書には技としての彫りが七通りの手法として記されております。
 ところがその精神は口伝として書かれておりません。
   己を投げ出したところに見つかるんじゃ・・・そこで本物が描ける・・・勝手に手が動く、動かされる・・それが口癖でした。
 以前、先代親方が入院された病室で筆をとり描かれた龍の彫刻があります。
現在、山門の中心に据えておりますが何故かご老人方がその門を潜る時手を合わされます。
 よくよくお話しを聞くと「この龍に手を合わすと不思議と病が直る気がするんです・・」
絵画や書も描き手の性格が垣間見られます。
 (そこに面白い所もあるのでしょうが・・)
  私達宮大工には”個性”は許されません。
   先代親方の云われてきた精神に追いつくまで生涯精進あるのみです。
写真・・・神戸長田 安楽院本堂正面向拝 蛙股 {親子龍}裏彫り{鳳凰}  巾六尺五寸 欅
  大都流三十二代 西嶋 靖尚鳳雲 画

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