大都流の教え

大都流三十一代 西嶋 勉

 私は神佛の堂宇を造る大工です。
正直申しまして学も地位も全くありません。
それでも私には誠の願いがあります。
ただそれだけでノミを振るわせていただきました。
私は幸せものであります。

    堂宮大工 大都流三十一代 西嶋 勉 臥龍






上棟式概説

上棟の式

 上棟の式にも、古来からの様式があり、式法作法などの起源は、非常に古いものであるが、この上棟式はすべて、感謝の祭りが始まりである。

 口傳によれば、今を溯る大化の改新後、各諸制度が定められると共に、各祭式も重要視された。
中世より上棟の祭式の基準も定められ、特に神式佛式が重要視されると共に、各匠長家の特権となり、口傳として傳授されてきた。
今日まで、この古式の祭式が受け継がれてきているが、神式、佛式、本来の祭式は偉大なる天地自然に対する敬い、神佛への感謝を捧げる祭りなれば、十分尊重し行うとされている。


 社寺が計画されてから竣工する迄の間、匠長、匠、関係者にとっては、恰も我が子を生み育てる気持ちをもって、すべて工事に当たるのが常である。
殊に工匠達は、常識、道徳、理性はすべて頭の中から抹殺して、又それを乗り越えて行き、時には想像も出来なかった芸術的な、秀作が出来上がって行くにつれての味わう喜びの気持ちも、又ひとしお深いものである。

 建築の儀式と祭典は事始より、完成される迄の重要な時々には、それぞれの式を取り行い、諸工事を成就させていただヾくことをお願いするのである。
特に上棟の式は、工事が一段落となり重要な時に当たるので、最も諸事丁寧を盡し、神佛をお迎えして、これ迄の工事が無事進んだ感謝と、竣工にいたる迄の加護を祈願し、又今後幾久しく禍なく、幸多いことを祈り祝い、主要構造の最終の打締めを行うと共に、折目切目を正しくする上においても、極めて重要な意義を持つのが、上棟式であり祭りである。

大都流三十一代
西嶋 勉 臥龍